労働審判の弁護士費用?残業代や未払金の支払い、慰謝料の請求など会社との問題を解決する

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労働審判制度は、会社と労働者の問題を解決するための調停で、「互いが合意して解決する」という点がポイントになっています。

 

裁判とは異なり、弁護士がいなくてもおこなうことができます。

 

しかし、審理回数が3回と短いため、事前の準備がとても重要になります。

 

自分ではしっかり準備したつもりでも、証拠不十分とされてしまうこともあるんです。

 

また、引き際や折り合いのつけ方、落とし所などを短期間で判断しなくてはいけません。

 

自分ではどのように判断したら良いかわからないことも出てきます。

 

一方、弁護士に相談や依頼して労働審判に望むことで、準備不足もなく、会社側の問題点を明確に示すことができます。

 

多くの経験から、妥当な判断もしてくれます。

 

納得いく解決のためにも、まずは弁護士に相談してみるといいでしょう。

 

ここでは、労働審判についてや弁護士に依頼した場合の費用の相場、労働審判に向いている労働問題や解決事例を紹介します。

 

 

1.労働審判とは?裁判より迅速で簡易な審理ができる〜審判のポイント

 

まずは労働審判について説明します。

 

審理という形で、裁判官(労働審判官)1名と労働審判員2名と話し合いが行われます。

 

審理の回数は3回です

 

ただし、実際には2回目に終了することも多くあります。

 

そのため、申立てをしてから審判が終わるまでの期間は、だいたい3か月以内です。

 

1回目は申立ての日から40日以内で指定され、2回目は1回目の2〜3週間後となります。

 

具体的に審理の流れを見ていきましょう。

 

1-1.@申立〜全てを出し尽くすのが基本

 

問題点や問題に関係する証拠資料などを準備して、書面で提出します。

 

後から資料を追加で出すこともできますが、3回しかない労働審判では、申立ての時点で全てを出しつくすのが基本です。

 

1-2.A1回目〜1回目で話し合いが終わることもある

 

すでに提出されている書面をもとに、争いがある点や証拠の整理などをおこないます。

 

審判の特徴は、1回目で裁判官や審判員に情報を共有して把握してもらい、話し合いをおこなう点です。

 

裁判官や審判員は、当事者やその代理人から事実関係を聞いて確認し、話し合いを進めていきます。

 

時間は1〜2時間程度です。

 

問題がハッキリしていたり折り合いがつきそうなら、裁判官は1回目で調停案(和解案)をだしてしまいます。

 

双方がこれに応じれば、1回目で調停は成立して終了となります。

 

1-3.B2回目〜1回目では折り合いがつかない場合に行われる

 

1回目で終わらない場合、2回目がおこなわれます。

 

補足や証拠の追加については、2回目がおこなわれる前までに提出しておく必要があります。

 

1回目と同じように、当事者と裁判官、審判員とで話し合いがおこなわれますが、実際に話し合いや主張をすることができるのは、この2回目が最後です。

 

当事者同士の折り合いがつかなくても、裁判官は調停案(和解案)をだします。

 

その内容に双方が応じれば、調停は成立して終了となります。

 

どちらか一方でも調停案を受け入れない場合には、3回目へと進むことになります。

 

1-4.C3回目〜裁判官の調停案(和解案)をもとに話し合う

 

3回目は、話し合いができる最後の機会です。

 

2回目で裁判官が出した調停案をもとに話し合いは行われます。

 

折り合いがつかなかったり応じない場合でも、裁判官は最終的に判断します。

 

その内容は、2回目にだした調停案と同様の内容になります。

 

裁判官の最終的な判断に異議がなければ、審判は確定して終了となります。

 

なお、裁判官の判断(審判)に納得できない場合には、異議の申立てというのができ、裁判へと進むことになります。

 

1-5.たった3回しかない審判でのポイント

 

このように、審理は3回までありますが、実際には1回目や2回目で調停案が出されることになります。

 

そのため、1回目が行われる前の段階で、全ての証拠や主張を整理して提出することが重要です。

 

また、判断するのは裁判官ですから、法律的な観点で証拠を示し、文書で主張して事実の証明をしなくてはいけません。

 

1-6.労働審判のメリットデメリット〜審判では解決できない労働問題もある

 

審判を利用する最大のメリットは、短期間での解決を望めることです。

 

面倒な問題をさっさと片付けられます。

 

また、弁護士に依頼したとしても、費用を安くおさえられます。

 

一方で、審理が3回しかないため、短期間の話し合いでは解決できないトラブルだと活用する意味がありません。

 

1-7.労働審判に向いている労働問題〜残業代や給与未払い・不当解雇など

 

労働審判に向いている問題は、問題が単純で明らかなものです。

 

そして、その問題に関係する証拠が用意できるものです。

 

具体的には、

 

  • 嫌がらせで会社をクビにされた、理由もなく解雇されたなどの不当解雇
  • 残業代や退職金を支払ってくれない場合
  • 給料を支払ってもらえない場合

 

これらの問題であれば、審判を活用するメリットはあります。

 

実際に、不当解雇や給料・残業代などで審判を活用したケースでは、7割近くが3回と限られた回数の中で解決できています。

 

1-8.労働審判に向いていない問題〜パワハラやセクハラ問題

 

パワハラやセクハラなどは労働審判には適していません。

 

なぜなら、双方の主張が食い違うことが予想され、どちらの言っていることが正しいのかで争うことになります。

 

録音などの決定的な証拠があれば別ですが、限られた審理回数では裁判官も判断ができません。

 

当事者同士も、1、2回程度の話し合いでは折り合いがつけられないでしょう。

 

また、審判は会社と個々の労働者との問題を対象としているため、組合VS会社といった集団的な労使紛争も対象外です。

 

そのような問題は、初めから通常の裁判で行うべきです。

 

ただし、実際には個々のケースで状況は異なりますから、どのような解決方法をとったほうが良いかについては、弁護士に相談してみるといいでしょう。

 

1-9.審判とあっせんならどっちを活用するべき?〜あっせんは解決の可能性が低く手続きが無駄になる

 

あっせんと労働審判を似たようなものだと思っている方がいますが、全く違います。

 

あっせんは、労働基準監督署が揉めている人のために、話し合いをするテーブルを用意してくれるだけです。

 

そのテーブルに座るかどうかは自由なので、会社側が「話し合いません」と言えば終わりです。

 

実際にも、ほとんどがそうなっています。

 

あっせん委員もいますが、強制的な判断は下せないので、制度としてはあるだけの感じとなっています。

 

あっせんを利用して解決できる可能性は低いと思ってください。

 

2.労働審判の弁護士費用はいくらかかるのか?

 

通常の裁判であれば、弁護士費用は着手金と報酬金を合わせて60万円以上がかかります。

 

しかし、労働審判を利用することで、弁護士費用は安くおさえられます。

 

実際に、弁護士に依頼した場合の費用をみていきましょう。

 

2-1.相談料と着手金の相場〜審判の着手金は10〜25万円が相場

 

相談した場合の相談料は、無料または30分5000円〜となっています。

 

着手金については、10万円〜25万円程度が相場です。

 

なお、審判せずに示談交渉で解決できるケースもあります。

 

その場合の着手金は10万円程度が相場です。

 


また、着手金を確認する際には、報酬についてもよくチェックしてください。

 

審判の場合、「解決ができたら成功報酬をとる」という形の弁護士が多くいます。

 

その場合、着手金を低めにして成功報酬を高めに設定していることがよくあります。

 

逆に、着手金を通常どおりにして、成功報酬を低くしているパターンもあります。

 

弁護士報酬の取り方は様々ですので、必ず確認してください。

 

2-2 弁護士報酬の相場〜利率は16〜25%程度

 

労働審判の場合、解決した場合のみ報酬が発生するのが一般的です。

 

計算方法は、民事訴訟と同様の費用体系を使っている弁護士が多い傾向です。

 

具体的には、「経済的利益」に利率をかけて算出されます。

 

利率の相場は、16〜25%程度ですが、利率によって費用に差がでるのでよく確認するべきです。

 

例えば、経済的利益が100万円の場合。

 

  • 利率が16%だと報酬は16万円
  • 利率が25%だと報酬は25万円

 

約10万円の差がでます。

 

さらに、経済的利益の考え方もよく確認してください。

 

報酬の際の経済的利益の考え

 

弁護士によって次のように2つに分かれています。

 

例えば、残業代を会社から100万円で提示され、納得がいかず揉めてしまい、弁護士に依頼した結果、180万円で解決できたケース。

@経済的利益を差額とするパターン
最終的な回収額180万円?会社側の主張100万円の差額80万円が経済的利益となります。

 

A経済的利益を回収額とするパターン
回収した金額180万円がそのまま経済的利益となります。

 

@とAでは経済的利益に100万円もの差が出ますが、実際にどう影響するか見ていきましょう。

 

例えば、経済的利益の20%が報酬になる場合。

 

@のパターンだと報酬は16万円。
Aのパターンだと報酬は36万円。

 

経済的利益の考え方の違いだけで、20万円もの差がでます。

 

報酬を確認する際には、「利率」だけでなく、「経済的利益の考え方」にも注目してください。

 

3.労働トラブルの解決事例と弁護士費用

 

実際に弁護士に依頼するといくらかかるのかを解決事例から紹介したいと思います。

 

中には交渉だけで解決した例もありますので、参考にしてください。

 

3-1.残業代不払い請求と弁護士費用〜弁護士による交渉で2ヶ月で解決

 

バスの運転手による残業代請求の事例です。

 

毎日のように1時間から3時間くらいのサービス残業をしていた方でした。

 

会社には何度か残業代を請求しましが、応じてくれなかったようです。

 

会社の対応や仕事状況に嫌気がさして退職することに決めました。

 

その際に、弁護士に依頼して、会社に残業代を請求してもらったのです。

 

弁護士は会社に対して、内容証明郵便を発送。

 

すぐに会社側から連絡があり、交渉が始まりました。

 

勤務時間についてはタイムカードで管理されていたため、証拠も十分でした。

 

会社側は未払いの残業代があることを認め、残業代180万円に加えて解決金として20万円で和解ができました。

 

弁護士に依頼してから約2ヶ月後に合計200万円が支払われ、弁護士費用は着手金10万円と成功報酬32万円となりました。

 

3-2.退職金請求と弁護士費用〜労働審判により160万円で解決

 

運送会社で11年働いてきた方の事例です。

 

退職するにあたり、会社の退職金規定にしたがって計算したところ、退職金は180万円でした。

 

しかし、会社の社長から、「お前に払う退職金なんてない」と退職金の支払いを拒否されたのです。

 

そこで、弁護士に依頼。

 

弁護士から内容証明郵便をだしましたが、無視されました。

 

弁護士がなんども会社に電話を入れましたが、社長不在とのことで応じてくれませんでした。

 

弁護士は、労働審判を申立て、その結果、裁判官は解決金として160万円を提案。

 

会社側はこれに応じ、解決ができました。

 

これにかかった弁護士費用は、着手金10万円と成功報酬約25万円でした。

 

3-3.嫌がらせによる不当解雇〜労働審判で解決金190万円を獲得

 

入社2年目で不当解雇された方の事例です。

 

従業員数が12人程度の会社で働いて2年目を迎えるときでした。

 

突然にして、「経営上の都合」という理由で解雇通知を渡されたのです。

 

納得がいかず、自分の勤務態度などに問題があったのかどうかを会社側に尋ねたところ、特にそういうことはありませんでした。

 

しかし、会社側は「経営上の都合」という曖昧な理由で解雇する意思を変えなかったため、弁護士に相談しました。

 

弁護士は会社側に内容証明郵便で不当解雇にあたる旨を通知。

 

会社側はこれに対して、50万円での解決金を提案してきました。

 

幼い子がいる方からの依頼ということと、相場よりも低い金額であったことから、弁護士は50万円では足りないと判断。

 

すぐに労働審判を申し立てました。

 

裁判官は、1回目の時点で「明確な理由もない解雇」だとして解雇は無効だという判断をしてくれました。

 

解決金については、給料の4.5カ月分として190万円が提案されました。

 

会社側も裁判官の提案に応じ、和解が成立したのです。

 

弁護士費用は、着手金15万円と成功報酬約22万円となりました。