刑事事件で弁護活動をする弁護士には、国選弁護人(国選弁護士)と私選弁護人がいます。
そして、多くの方は、「国選弁護人は誰でも利用できる」「無料で利用できる」といった認識を持っているようですが、それは違います。
また、私選弁護人との違いも知らない人も多いでしょう。
ここでは、国選弁護人を利用できるケースや費用について、私選弁護人との違いを詳しく解説していきたいと思います。
このページの目次
1.国選弁護人の費用がかからないは嘘!数万〜30万円程度の支払いを請求されることもある
1.国選弁護人の費用がかからないは嘘!数万〜30万円程度の支払いを請求されることもある
国選弁護人という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、「費用を請求されることがある」ことを知っていましたか。
国選弁護人は、国の弁護士というイメージや国(裁判所)が勝手に選んでつけるわけですから、どうして費用がかかるの?と思われるかもしれません。
ですが、弁護活動をしてもらっている以上、費用を請求されることはあるのです。
それに、国の税金を使っているため、「費用を払える人には支払ってもらうべき」ということも理由です。
実際に支払うことになるかどうかや金額については、裁判官が決めることになります。
そこで、これまでのケースから、費用を支払わなくてよい場合と支払うことになる場合を紹介していきます。
1-1.国選弁護人費用を支払わなくてよいケース
国選弁護人の費用を払わずに済むケースには条件があります。
どんな条件があるのかを説明します。
この場合には国選弁護人の費用を請求されません。
この場合には刑務所に行くことになるので、働いて収入を得ることができません。
よって、費用は請求されません。
裁判官は収入や預貯金等について確認をおこないます。
支払えるようなお金がない、と判断された場合は請求されません。
1-2.国選弁護人費用を支払う必要があるケースとその金額
実際に請求されるかどうかは裁判官次第なところもありますが、過去の実例から費用を負担することになるケースを紹介します。
執行猶予がついた場合
執行猶予がつけば、有罪判決にはなりますが通常の生活には戻れます。
よって、働くことが可能なので、費用を請求されることがあります。
在宅起訴や保釈された場合
働ける環境があるので請求されることになります。
実際に、この処分をされた方は逮捕された後でも逮捕前と変わらずに働いている人がほとんどなので、費用の請求をされています。
ただし、働いていても、貧困など特別な事情がある場合には、裁判官の判断によって支払う必要がないとされています。
1-3.国選弁護人費用を請求された場合の金額〜30万円以下
事件の内容などから金額は決められます。
争いのない事件で勾留段階から弁護人がついた場合 | 15〜20万円 |
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起訴されてから弁護人がついた場合 | 8万円程度 |
通常の事件では、どんなに高くても30万円程度となっています。
ただし、裁判員裁判になると100万円近くの請求をされることもあります。
2.国選弁護人がつけるには条件がある〜限られた人しか利用できない
国選弁護人は、国が選ぶ弁護人なので、裁判所によって選ばれます。
自由に選ぶこともできず、さらに、誰もが必ず付けられるわけではありません。
このように、国選弁護人というのは、私選弁護人とは大きく異なります。
利用できる条件や私選弁護人との違いについて詳しく解説していきたいと思います。
2-1.国選弁護人を付けられる条件〜収入や資産、刑によって判断される
国選弁護人を利用できるかどうかの条件は、次のとおりです。
- 貧困やその他の特別な事情があること
- 預貯金が50万円に満たないこと
- 勾留状が出ていること
- 法定刑が長期3年を超える懲役や禁固であること
まず、経済的な事情が条件になります。
国選弁護人を利用できる条件@〜金銭的に余裕がない人
貧困や収入がない方、収入があっても少なくて預貯金がない方などが対象になります。
具体的には、預貯金の額が50万円に満たないことが1つの条件です。
国選弁護人を利用できる条件A〜処分が重い事件
国選弁護人をつけられるかどうかは、法定刑も条件となります。
例えば、殺人事件の犯人なら法律で死刑か無期懲役、もしくは5年以上の懲役になります。
人を殴って怪我をさせた場合には、15年以下の懲役か50万円以下の罰金となります。
このように法律に定められている処分のことを法定刑と言います。
逮捕された直後の被疑者の段階ではまだ確定はしていませんが、どんな法定刑となっている罪で処分されるかが条件となります。
そして、国選弁護人がつけられるのは、法定刑が次のものです。
「死刑、無期、長期三年を超える懲役もしくは禁錮」
これに当てはまることが条件です。
例えば、痴漢事件の場合や脅迫事件。
痴漢は自治体の条例で処罰されますが、長期3年を超える懲役を定めている自治体はありません。
脅迫は刑法第222条で2年以下の懲役又は30万円以下の罰金となっています。
どちらも条件には当てはまらないので、国選弁護人をつけることはできません。
国選弁護人を利用できる条件B〜勾留状が出ていること
さらに、勾留状が出ていることも条件になっています。
勾留状は警察から身柄を検察官に移された後、検察官が勾留期間をのばすために請求するものです。
そのため、逮捕後から約3日間はつけることができません。
なお、逮捕されたものの勾留を請求されない場合もあります。
例えば、喧嘩などです。
軽犯罪でも在宅捜査となれば勾留状は出ません。
よって、国選弁護人はつけられません。
このように見ていくと、一定の重罪を除き、国選弁護人がつくのは起訴された後になるのが一般的です。
場合によっては、裁判になるまで国選弁護人がつけられないこともあります。
3.国選弁護人と私選弁護人の違いは?〜費用の差は仕事の差
逮捕された方の弁護活動を行う、という意味では私選弁護人との違いはありません。
ただし、質や量が異なります。
例えば、依頼者から「不起訴や起訴猶予、または執行猶予がつくようにしてほしい」と要望があれば、その要望に応えられるように判断がされてしまうまでにスピーディに打てる手を打ってくれます。
国選の場合には、そういった期待はできませんし、最低限の弁護活動をしてくれるだけと思っておいた方がいいでしょう。
面会についても、私選弁護人なら、面会をお願いすればその日のうちか、遅くても次の日には来てくれます。
一方、国選だと、来てはくれるものの、いつ来るかは弁護士の都合次第です。
家族に対しても対応は異なります。
私選なら、面会に行った日には書面や電話などで家族にも連絡を入れてくれます。
国選の場合は、「聞かれなきゃ応えない、聞かれれば答える」というスタンスです。
私選弁護人は自分で費用をだして雇うため、依頼を受けた弁護士も熱心にテキパキと活動を行ってくれます。
国選と私選では費用にも大きな開きがありますが、その差は仕事内容や対応の差だと捉えてください。