刑事事件でかかる費用については、逮捕された方の状況から2つに分けることができます。
@「自白して罪を認めているような標準的なケース」
A「無罪や冤罪を取りにいく困難なケース」
痴漢で捕まってしまった例で説明すると、
@は痴漢をしたことを認めている場合です。
Aはやっていないと否認している場合になります。
弁護士にかかる費用は、@の場合よりもAの否認している場合の方が高くなります。
これは別の事件でも同様です。
また、困難なケースでは、着手金だけで50万円以上することも珍しくありません。
刑事事件の着手金では、@の罪を認めている場合でも30万円以上かかるのが通常です。
一見すると高いように感じると思います。
しかし、弁護活動をしてもらうことで、家族や知人のサポートや早期の社会復帰が可能になります。
その他にも費用以上のたくさんのメリットがあります。
ここでは、刑事事件の弁護士費用と弁護士活用のメリットなどを紹介していきます。
このページの目次
1.弁護活動を依頼するメリット〜時間のない中で効果的に弁護活動をしてもらう
まず、弁護士の仕事として、逮捕されている方のためにすることは次のとおりです。
一般的な活動例
- 勾留請求された場合に勾留を不相当とする旨の意見書を提出する&裁判官と面接を行う
- 被害者との間で示談交渉を行い成立させる
- 示談できた場合には、検察官に示談書を提出して不起訴になるように申し入れる
- 逮捕された方に会いにいく(約3回程度)
なお、逮捕されている方が罪を認めていない場合には、次のような弁護活動も行います。
- 無罪を取るための裁判の準備(資料集めや提出文書や資料の作成、尋問に向けた打ち合わせ)
- 裁判への出頭(約6回程度)
※罪状や犯罪の内容によっては異なりますので、参考までにとらえてください。
刑事事件は、普段は馴染みのない事件ですから、その弁護活動を説明されてもピンとこないかもしれません。
そこで、もっと詳しくメリットを説明していきます。
1-1.刑事事件では初期段階においての弁護活動がとても重要
刑事事件は、とにかく時間に余裕がありません。
一度逮捕されてしまうと、72時間で検察によって勾留されるかどうかが決まってしまいます。
その後も、たいした日にちもなく、どんどんと手続きは進みます。
そのような中で、弁護士の役割について1つずつ紹介していきます。
逮捕された直後に面会できるのは弁護士だけ〜家族は連絡も取れない
逮捕後72時間は、逮捕された方の両親や妻(夫)、子供ですら面会することができません。
家族としては一番状況を把握したいとき、捕まった本人としては一番不安なときに面会どころか連絡もできないのです。
唯一、弁護士だけが逮捕後72時間以内であっても面会することが可能になっています。
弁護士に依頼することで、逮捕後、すぐに状況を把握することが可能になります。
逮捕された方にとっても、不安や心配なことを聞ける唯一の存在となります。
勾留中の弁護活動が不起訴のカギとなる
逮捕されると、その後48時間は警察の聴取にあてられます。
警察の聴取が終了すると、次は検察官へと身柄は移され(送検とか送致と言われます)、検察官の捜査が始まります。
検察官の捜査時間は、基本的には24時間以内です。
この期間中も、家族は面会や連絡ができません。
そして、検察官が処分を決めるわけですが、持ち時間の24時間では判断できない場合には、勾留請求というのを裁判所に対しておこないます。
裁判所がこれを認めると、最大20日に勾留が延長されるのです。
ちなみに、検察官の勾留請求は認められるのが通常です。
結果、実際に検察官が処分をだすのは、逮捕されてから数えると10日〜20日間後となります。
不起訴とされる為には、この期間中になにかしらの手を打つ必要があるのです。
不起訴をとるための大きな一手は示談
刑事事件では、多くの案件で不起訴となっているのが実情ですが、その理由は被害者との間で示談を成立させていることです。
なお、本人は捕まっているので示談交渉なんてできません。
その家族がやるにしても、被害者が交渉に応じてくれるはずがありません。
逮捕から間もない時に被害者と示談交渉できるのは、弁護士くらいです。
示談が不起訴のカギとなる場合には、初期段階で弁護士がいないと無理だと言えます。
この点でも、弁護士がいることのメリットはかなり大きいのです。
無罪や冤罪はもちろん、減刑や執行猶予判決をとりたいなら弁護士が必要
一度逮捕されてしまうと、無罪や冤罪を主張して勝ち取るのは本当に大変なことです。
素人だけでは到底無理ですし、通常の弁護活動だけでも足りません。
また、減刑や執行猶予判決をとる場合も、やはり弁護活動が必要となってきます。
もちろん、前科・前歴の状況も大きく影響してきますが、それをクリアするだけでは執行猶予はつかないのです。
執行猶予がつくかどうかのポイント
このようなことも考慮されます。
資料や書面を用意して、裁判官に良い判断をしてもらえるように示さなくてはいけません。
素人がこれをおこなうことは、難しいでしょう。
一方、弁護士がいれば、効果的な書面等を準備することが可能になります。
2.刑事事件の弁護士費用の相場〜着手金と報酬金の合計で約100万円
刑事弁護の費用は、弁護士事務所や事件の内容によって様々です。
否認している場合や裁判員裁判の場合、または困難なケースになればなるほど費用は高くなります。
また、弁護士や法律事務所によってかなりの開きがあります。
中には、相場よりもかなり高額に設定している法律事務所も少なくありません。
急いでいる状況かもしれませんが、まずは相場を知っておくべきです。
そのうえでどんな弁護士にするのか検討しましょう。
2-1.刑事事件の相談料〜家族からの相談は0円
刑事事件の場合、逮捕前であれば本人、逮捕・勾留されている場合にはその方の家族が相談ということになります。
多くの事務所を調べてみると、逮捕・勾留されている人の家族からの相談は、「無料」という事務所が多くなっています。
なお、無料ではない事務所では、30分5000円〜というのが相場です。
相談には1〜1,5時間はかかるため、相談費用は1万円程度が必要になるでしょう。
次に、弁護をお願いした場合の着手金についてです。
2-2.刑事事件の着手金〜最低でも30万円が相場
罪を認めている通常事件での着手金の相場は、30〜40万円程度(税別)となっています。
裁判員裁判の対象となる事件の場合には、通常事件の費用よりも10〜30万円高くなります。
無罪や冤罪を主張して争うような場合にも、一定額が加算されます。
否認している場合の着手金の相場は、40〜50円程度です。
なお、被害者がいて示談ができそうな事件の場合、示談交渉について別で費用をとる弁護士もいます。
着手金を確認する際のポイントとしては2つです。
- 示談交渉の費用が着手金・報酬金に含まれているかどうか
- 実費や日当が着手金に含まれているかどうか
2つのポイントによって費用に差がでてきます。
弁護士を選ぶ際には、よく確認してください。
2-3.弁護活動の結果によって異なる報酬金〜結果次第で10〜60万円
刑事事件の報酬金は、結果によって異なります。
報酬が発生するケースは、以下のような結果になったときです。
- 無罪になった場合
- 不起訴、起訴猶予、処分保留釈放になった場合
- 執行猶予判決で釈放された場合
- 検察の求刑よりも軽い刑だった場合
また、事務所ごとにそれぞれ金額が決められています。
参考までに調査した費用例を紹介します。
無罪になった場合 | 報酬金50〜60万円程度(税別) |
---|---|
不起訴、起訴猶予、処分保留釈放にできた場合 | 報酬金30〜40万円程度(税別) |
執行猶予判決で釈放された場合 | 報酬金30〜40万円程度(税別) |
検察の求刑よりも軽い刑だった場合 | 1年減刑された場合10万円など(減刑1年単位で計算されます) |
2-4.接見だけを依頼する場合〜1回につき約2〜5万円が相場
接見だけを弁護士に頼むこともできます。
接見費用の相場は、1回につき2〜5万円です。
何度も接見をお願いしてしまうと、接見費用だけで10万を超えることもありますので注意してください。
また、事務所によっては、「初回のみ無料」などのサービスをしているところもあります。
接見は、1回で数万円とけして安くはない金額なので、接見を依頼する際はよく確認してください。
なお、弁護を依頼した場合には、接見費用はかからないのが一般的です。
2-5.刑事事件で実費が必要な場合〜1〜5万円程度がかかる
刑事事件では、面会や書面提出の際の交通費や記録謄写代などの「実費」が必要となってきます。
裁判になるかどうかでも変わってきますが、実費としては1〜5万円程度をみておけばいいでしょう。
なお、事件終了時に支払う場合もあれば、依頼時にあらかじめ数万円を預け、終了後に精算する事務所もあります。
また、実費というのは、基本的には着手金や報酬金とは別にとられるものですが、中には着手金に含まれている場合もあります。
実費についての説明がない場合は、確認してみてください。
3.示談解決が可能な犯罪と示談金の相場〜10〜200万円
犯罪の種類や内容によって示談金の額は変わります。
また、相手がいることですので、全てのケースで相場内の示談ができるわけではありません。
そのうえで、相場を紹介していきますので、参考程度に確認してください。
示談金相場
暴行罪 | 10〜30万円 |
---|---|
傷害罪 | 10〜100万円 |
窃盗罪 | 被害額+〜20万円程度 |
詐欺罪 | 被害額+〜20万円程度 |
横領罪 | 被害額+〜20万円程度 |
恐喝罪 | 被害額+〜20万円程度 |
強盗罪 | 被害額+〜50万円程度 |
強姦罪 | 100〜200万円 |
痴漢 | 10〜30万円 |
4.刑事事件では弁護士選びも重要です
刑事事件の場合は、弁護士なら誰でも良いわけではありません。
弁護士の中には刑事事件が苦手な方もいます。
一方で、刑事事件に力を入れている弁護士もいます。
選ぶ基準としては、一定の数をこなし、経験が豊富な弁護士を選んでください。
その理由は、刑事事件はスピード感が重要になるからです。
また、示談の有無が結果に大きな影響を与えることが多いからです。
新人や経験の浅い弁護士では、被害者を相手に示談交渉をうまく進められないことがあります。
スピード感も、経験からしか身につけられません。
ある程度の費用を支払うのですから、弁護士選びは急ぎつつも慎重に行っていきましょう。