遺産分割や相続問題は、裁判所での調停・裁判の件数を見ると、揉めているケースがかなりあることがわかります。
家庭裁判所への相談件数をみても、1年間で17万件ですから、遺産相続では何かしらの問題が非常に多く起きているのです。
このように問題になることが多い相続ですから、「遺言書を作成したい」とか「弁護士に相談をしたい」と考えている方は多いと思います。
ここでは、相続額や抱えている問題によって弁護士費用がどれくらいかかるのか、費用や相場を実例をもとに紹介していきます。
このページの目次
1. 遺産分割問題を弁護士に相談するといくらかかるの?1〜1.5万円くらい用意しておけばOK
2.遺産相続問題を依頼した場合の弁護士費用〜大きく2つのパターンに分けられる
3.揉めていたり問題がある場合の弁護士費用〜遺産分割の着手金と報酬金を旧報酬規定で算出
4.【ケース別】遺産分割の弁護士費用の種類
1. 遺産分割問題を弁護士に相談するといくらかかるの?1〜1.5万円くらい用意しておけばOK
まず、遺産分割問題の相談について紹介します。
一般的に30分5000円(税別)です。
そして、30分経過するごとにプラス5000円(税別)という形になっているのが一般的です。
実際に相談してみると、1時間〜1時間半はかかります。
相談費用としては、1万円〜1.5万円程度をみておけばいいでしょう。
また、「初回60分まで無料」という事務所もあります。
ただし、時間制限なく初回は無料な場合と、60分を超えた場合はその後30分5000円など、様々なパターンになっています。
初回が無料の場合でもよく確認してください。
なお、依頼した後については、相談費用は取られません。
安心して悩みや疑問をぶつけてください。
2.遺産相続問題を依頼した場合の弁護士費用〜大きく2つのパターンに分けられる
- 相続問題と言っても色々な要望があります。
- 相続財産の分割を依頼したい
- 遺言書を作成してもらいたい
- 相続トラブル・揉め事の解決を依頼したい
- 遺留分の請求やトラブルについて依頼したい
- 相続放棄をお願いしたい
- 相続人調査をしてほしい
- 代襲相続について教えてほしい
- 財産調査をしてほしい
- 成年後見人の相談をしたい
- 財産の使い込みの調査やその返還をしてほしい
- 相続登記・手続きをしてほしい
問題や要望は人によって様々ですが、費用を考える際には大きく2つのパターンに分けられます。
@の揉めている場合の解決を依頼するパターンでは、比較的費用が高くなります。
ここでは、費用が高くつく場合と安く済む場合に分けて説明していきます。
2-1.費用が安く済む場合〜手続きの依頼は
例えば、財産や相続人の調査、遺言書作成。
これはトラブルがない依頼になり、手数料だけで済みます。
報酬も必要ありません。
相場は5〜15万円程度です。
また、相続放棄や遺言執行などの手続きも揉めていない依頼なら弁護士によってそれほど差はありません。
手続きをする人数などにもよりますが、10〜30万円程度でしょう。
なお、戸籍謄本(除籍)や住民票などを取得するための定額小為替代や郵便代といった実費は必要になります。
2-2.費用が高くなる場合〜「旧報酬規定」を使って計算される
トラブルとなっている場合は、手数料ではなく、「着手金と報酬金」という形で費用がとられます。
また、多くの弁護士が着手金と報酬金を計算する際に「旧報酬規定」を利用しているのが特徴です。
実際にいくらかかるのか、個々によって問題は様々ですので、色々な条件をもとに実例で紹介していきます。
3.揉めていたり問題がある場合の弁護士費用〜遺産分割の着手金と報酬金を旧報酬規定で算出
まずは「旧報酬規定」を説明します。
費用を算出するにあたって、「経済的利益」という意味を知る必要があります。
また、経済的利益は、着手金と報酬金とで意味が異なるため、ひとつずつ説明していきます。
3-1.着手金と報酬金を算出するときに用いられる経済的利益とは?
始めに、着手金の場合です。
着手金を計算するときに用いられる経済的利益とは、「得られる見込みのある額(請求額)」のことです。
例えば、遺産分割の場合。
法定相続人の相続分は民法で決まっていますが、その法定相続分が経済的利益となります。
法定相続分は権利だから経済的利益とならないのでは?と考える人がいますが、主張しなければ相続分が自分のものになるかどうかはわかりません。
よって、着手金を計算する際には法定相続分(得られる見込みのある額)をもとにして計算されます。
一方、報酬を計算される際に使われる経済的利益とは「実際に得た金額」になります。
ただし、遺産分割の場合は対象となる財産(相続分)について争いがあるかどうかでも計算方法が異なります。
事例をあげて具体的に説明していきます。
相続人2人で6000万円の相続分を争っている場合〜着手金は1.597.200円
事案例)相続人が2人いて、相続財産が6.000万円の場合
着手金においての経済的利益は請求金額(自分の相続分)ですから、3000万円です。
旧報酬規定Aの範囲に該当するので、「3000万円×5%+9万円+消費税」。
着手金は1,597,200円になります。
相続人2人で6000万円の相続分に争いがない場合〜着手金は597.200円
事案例)相続人が2人いて、相続財産が6000万円の場合
財産の範囲や相続分について争いがない場合、費用の算出方法が変わります。
経済的利益は、1人の相続分3000万円の3分の1となります。
3000万円×3分の1=1000万円を経済的利益として計算されます。
旧報酬規定Aの範囲に該当するので、「1000万円×5%+9万円+消費税」。
着手金は597,200円になります。
法定相続分3000万円を手に入れた場合の報酬金〜弁護士報酬は597,200円
報酬の際の経済的利益は、実際に手に入れることができた金額です。
相続分の3000万円が手に入った場合で説明します。
旧報酬規定Aの範囲に該当するので、「3000万円×10%+18万円+消費税」。
報酬金は3,434,400円となります。
遺産分割や相続問題の解決でかかる実費〜手数料や着手金、報酬以外にも弁護士にかかる費用がある
遺産分割やその他の相続問題を弁護士に依頼した場合、実費という費用がかかります。
具体的には、以下の費用です。
- 交通費(戸籍取得や法務局、裁判所への交通費)
- 郵便代(戸籍取り寄せのため)
- 定額小為替代(市区町村に支払う戸籍謄本代)
- 印紙代(登記簿謄本取得のためや裁判となった場合に印紙が必要)
相続問題では、必ずと言っていいほど、相続人を確定するために戸籍(除籍)謄本、財産を確定するために土地建物の登記簿謄本などが必要になります。
また、それに伴い役所への交通費などがかかります。
弁護士に依頼する前に用意して渡すこともできますが、不足があれば弁護士が取得して実費として請求されます。
4.【ケース別】遺産分割の弁護士費用の種類
自分の問題を依頼した場合にはいくらかかのか、ケース別で紹介します。
4-1.@遺産分割協議の代理人を依頼する場合〜交渉から裁判まで
遺産分割協議を弁護士に依頼する場合、段階に応じて費用が高くなります。
解決までの道のりが遠いほど高くなります。
また、相談内容と相続財産の金額によっても費用が異なります。
交渉で解決できた場合〜兄弟2人で財産1000万円なら着手金15〜20万円程度と報酬金70万円程度が相場
他の相続人と交渉する前に、一般的には通知書を内容証明で発送します。
内容証明の発送の依頼だけなら3万円程度が相場です。
ただし、内容証明だけで解決する例はほとんどありませんので、実際には交渉を依頼することになるでしょう。
例えば、何十年も連絡をとっていない弟と兄弟2人で財産1000万円の遺産分割を弁護士に依頼して交渉で解決できた場合。
着手金15?20万円程度と報酬金70万円程度が相場でしょう。
調停で解決した場合〜相続分500万円の場合なら着手金30〜40万円程度、報酬金70万円程度が相場
相続額にもよりますが、相続分500万円の場合なら着手金30〜40万円程度、報酬金70万円程度が相場でしょう。
なお、遺言書等で相続人の1人に全財産を相続させたケースの依頼は別です。
この場合には、他の相続人が相続分を主張して争うことになるため、「遺留分減殺請求」のところで紹介します。
4-6.E遺留分減殺請求〜遺留分の請求や分割トラブルを弁護士に依頼した場合の費用
4-2.A遺言書作成を弁護士に依頼した場合の費用〜10万円〜18万円が相場
遺言書には公正証書遺言書と通常の遺言書があり、費用も異なります。
通常の遺言書の作成を依頼する場合は、10万円〜15万円程度が相場です。
公正証書遺言の場合は、通常の費用と同等かプラス3万円程度が必要になります。
別途、公証人へ支払う費用もかかります。
遺言書の保管を弁護士に依頼することもできますが、その場合には保管費用として月額1000円、または年間5000円などの費用が必要です。
4-3.B遺言執行を弁護士に依頼した場合の費用 20〜30万円程度が相場
遺言書がある場合、その内容通りの相続を実際に行うために様々な手続きをしなくてはいけない場合があります。
それを行う人のことを「遺言執行者」といい、弁護士に依頼することができます。
弁護士が行う業務は、次のような内容です。
- 相続財産の管理
- 不動産移転登記
- 預貯金の解約や払戻し
- 相続財産目録の作成
遺言執行費用については、最低でも20万円、30万円程度が相場になっています。
なお、相続財産が大きくなるにつれて費用が高くなる傾向です。
一般的な費用の相場は、以下のとおりとなっています。
経済的な利益の額 | 弁護士手数料 |
---|---|
〜300万円 | 30万円 |
300万円超〜3000万円 | 2%+24万円 |
3000万円超〜3億円 | 1%+54万円 |
3億円超〜 | 0,5%+204万円 |
4-4.C限定承認の手続きを弁護士に依頼した場合の費用〜兄弟2人なら50〜60万円が相場
相続財産には借金等のマイナス分も含まれます。
そのまま相続してしまうと、借金を抱えてしまうケースもあります。
そこで、相続財産のすべてを弁護士に調べてもらい、マイナス分よりプラス分が多い場合には「プラスになった部分だけを相続する」という方法があります。
これを限定承認といいます。
弁護士に依頼した場合の費用は次のとおりです。
着手金
パターン@
・相続人1名の場合:30万円。
・相続人が1名増えるごとに5万円加算されます。
パターンA
・相続財産価格の10%程度(最低50〜60万円以上)
成功報酬金
パターン@の場合
・プラス財産があった場合:プラスになった財産額の10%程度、または相続人1名につき最低10万円
・プラスにならなかった場合:相続人1名につき10万円
パターンAの場合
・報酬なし
実費
限定承認は裁判手続で行うため以下のような実費がかかります。
・裁判所におさめる手数料:800円
・裁判所に提出する切手:400円(※裁判所によって異なる)
・その他(交通費・郵便代・戸籍取得のための小為替代など)
4-5.D相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合の費用〜1名あたり5〜10万円が相場
法定相続人は、相続を受け取らないこともできます。
例えば、相続財産が借金しかない場合。
この場合、手続きも何もしないままだと借金を引き継いでしまいます。
借金を背負いたくない場合には、相続放棄の手続きが必要です。
弁護士に依頼した場合の費用は次のとおりです。
相続放棄1名あたり5〜10万円が相場です。
- 1名の場合5万円
- 2名なら8万円
- 3名以上なら1名3万円
相続放棄をする人数や調査内容によって多少異なります。
4-6.E遺留分減殺請求〜遺留分の請求や分割トラブルを弁護士に依頼した場合の費用
遺留分とは、相続人として最低限もらえる相続財産の割合のことです。
例えば、遺言書で弟に全ての財産を渡す、というケース。
遺言書どおりなら、兄は相続財産を受け取れません。
しかし、法律では「兄にも受け取る権利がある」ことが定められていて、その範囲も決まっています。
兄が相続分を受け取りたいなら、弟に権利を主張しなくてはいけません。
このように、自分にも遺留分があると請求することを「留分減殺請求」といいます。
弁護士に依頼した場合の費用は次のとおり、旧報酬規定が目安となります。
なお、報酬規定を使った着手金・報酬金の計算方法や経済的利益の意味については
3.揉めていたり問題がある場合の弁護士費用〜遺産分割の着手金と報酬金を旧報酬規定で算出
を確認してください。
4-7.F相続人調査や財産調査を依頼した場合の費用〜3〜5万円が相場
・相続人調査費用:5万円〜(別途実費代)
戸籍(除籍)謄本など必要な書類を弁護士が取り寄せて調査し、謄本取得に費用な定額小為替代が実費として請求されます。
なお、調査後に相続人関係図を作成するのが通常ですが、費用の中に関係図の作成費用が含まれているかどうか確認しておきましょう。
含まれていない場合、関係図を作成してもらうには別途15,000円程度が必要になります。
・相続財産調査費用:3万円〜(別途実費代)
関係人や関係各所から資料を取り寄せ、調査して財産目録を作成してくれます。
これによって相続財産の把握が可能になります。
4-8.G成年後見の申立を弁護士に依頼する場合の費用〜争いがない場合は20万〜30万円が相場
成年後見申立の費用については、親族の間で争いがある場合とない場合で費用が異なります。
争いがない場合の相場は、20万〜30万円程度です。
争いがある場合の相場は30〜50万円程度です。
どちらの場合も報酬がかからない事務所が多い傾向です。
また、1〜2万円ほどの実費が必要になります。
鑑定が必要な場合には、別途鑑定費用がかかります。
5.弁護士費用は抑えられる?〜サービス精神旺盛な弁護士を利用する
弁護士の多くは旧報酬規定を使用して費用を算出していますが、別の方法で自由に設定している弁護士もいます。
交渉20万円(調停移行の場合、+20万円)(裁判移行の場合は20万円追加)
交渉&調停で30万円(調停から裁判移行の場合は20万円追加)
また、相談料が無料だったりと色々なサービスをしている弁護士と様々です。
そのため、弁護士を比較することで弁護士費用をおさえることができます。
ただ、相続金額によっては、旧報酬規定の方がお得になるケースもあるので、よく比較してみてください。
なお、もしも、手元にお金がない場合。
最近では分割払いに応じてくれる弁護士や相続財産が手元に入ってから着手金を含めた費用を支払えば良い弁護士もいますので相談してみてください。
分割払いや後払いに対応してくれる弁護士もいない場合には、法テラスに問い合わせて、法律扶助制度が利用できるか確認してみてください。